新たにテレワーク(リモートワーク)を導入しようとする事業者や、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて急いでテレワークを導入したものの、導入について十分な検討をする時間がなかった事業者向けに、テレワークに伴って生じうる人事評価・労務・法務・情報セキュリティに関する問題点を簡単に記載致します。今回は、テレワーク導入にあたって、契約関係のギモンとして賃料の減額請求は可能なのかをご紹介致します。
賃料の減額交渉
任意に賃料の減額交渉が行われる場合は別として、法律上の賃料の減額請求権が賃借人に認められるケースは、「土地若しくは建物に有する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、または近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となった時」に限られています(借地借家法第32条1項本文)。つまり、賃借人の経済事情による減額請求は認められず、賃料と実際の市場価格の乖離が著しい場合に限って認められます。
新型コロナウイルスの影響がどの程度の機関となるかは不透明ですが、少なくとも2020年9月現在において、一時的な需要減による賃料相場の値下がりが生じていたとしても、借地借家法上の減額請求の根拠となりえる程度にはいたっていないと考えられます。
コラム
強制退去の目安
新型コロナウイルスの影響により賃料を支払えない状況になっても、強制的に退去しなくてはならないとは限りません。判例上、賃料不払を理由に賃貸借契約を解除するには、賃貸人と賃借人の信頼関係が破壊される程度に滞納が及んでいることが必要です。また、法務省民事局は、「新型コロナウイルスの影響により3か月程度賃料不払いが生じても、不払の前後の状況などを踏まえ、信頼関係は破壊されておらず、契約解除(立ち退き請求)が認められないケースも多いと考えられます」という解釈を示しています(経済産業省「テナント家賃の支払いを支援する制度について」脚注)。
まとめ
上記までにご紹介致しました通り、賃料の減額請求については、一時的な需要減による賃料相場の値下がりは法律に基づく減額請求の理由とはなりません。ただし、何十年も同じ家賃の場合は、その周辺の家賃相場が下落している可能性もありますので、この機会に見直してみることをお勧めいたします。