経理や財務の部署に所属すると、様々な業務が出てきます。財務管理の目的は、「会社に必要な資金をどのように調達して」「その資金をどのように運用していくか」の施策を考えて、企業価値を上げるために実行していくことにあります。経理は会社内で発生した取引に関して、仕訳を通して、記録計算することが業務になるため、財務計画の立案から資金の調達と運用がメインである財務管理とは異なる業務になります。手形は、小切手と同じように、一定の金額の支払を目的とする有価証券です。銀行から小切手帳を購入するように、手形帳も銀行から購入します。紙質はほとんど同じです。サイズは手形の方が若干大きく、記載事項も手形の方が多くなっています。両者の最大の違いは、手形には満期日があるという点です。小切手は、受け取った人が銀行に持ち込めばすぐに現金を受け取ることができますが、手形は支払期日まで待たなければ現金に換わりません。そこで手形管理の受取手形・支払手形管理についてご紹介を致します。
手形管理
取引の注意点
手形取引を行うと、売上を回収できないリスクが生じます。そのため、手形取引を行う場合には、次の点を考慮し、実施するようにします。
- 取引先の支払い能力などの確認のため、与信調査を行う。
- 与信状況に応じて、長すぎない支払いサイトを設定する。
- 与信状況を定期的に見直し、その都度状況に応じた対応をとり、与信が形骸化しないようにする。
手形要件
約束手形は、発行時、受取時ともに手形の要件の確認が非常に大切になります。手形要件の全てが記載されていないと、原則的に手形として有効に成立しないこととなりますので注意が必要です。
手形の要件には次のものがあります。
- 約束手形文句
- 受取人の名称
- 手形金額
- 支払約束文句
- 振出日
- 振出地
- 振出人の記名・押印
- 支払期日
- 支払地
受取手形の管理
手形の受取時には、要件の確認後、すぐに受取手形台帳に記入して現物を確認し、金庫に保管します。
また、手形管理の重要な観点として、期日別管理があります。受取手形は期日を過ぎると無効になるため、期日前に取り立ての依頼を確実にする業務手順を作っておくことが必要です。
支払手形の管理
銀行と当座勘定取引契約を結ぶと、約束手形帳、当座勘定入金帳などが入手でき、手形の振出が可能になります。振出人は銀行から購入した統一手形用紙に手形要件を漏れなく記載し、手形を振り出します。
手形を振り出す際には、次の点に注します。
- 支払期日管理を確実に行い、資金繰りに反映するようにする。
- 印紙を貼ることと消印を忘れないようにする。
また、管理にあたっては、不正が行われないように十分な対応が必要です具体的には、担当者以外の社内の第三者が実査を行う、手形帳と印鑑の管理を分けるなど、継続的に適切な管理体制が維持されるように業務フローを確立しなければなりません。
手形の裏書き
約束手形は支払日まで待てば振出人から支払いを受けることが出来ますが、支払期日前に取引先などへの支払いに充てるなど、譲渡することも可能です。譲渡人は裏書きすることにより、裏書人として遡及義務を負うことになります。
譲渡する場合には、手形のラ面に会社の住所や社名などを記載します。この時は、必ず裏書きが継続していることを確認します。
また、受取手形は裏書することにより、支払期日前に金利に相当する割引料を差し引いて金融機関に買い取ってもらうことが出来ます。これを手形の割引といいます。
手形の不渡り
不渡りとは、手形や小切手の支払期日が過ぎても債務者から債権社に支払いが行われず、決済出来ないことをいいます。
不渡りが起こった場合には、銀行から不渡り事由が記載された不戦がついて戻ってきます。この不渡り事由の確認後、受取人はそれぞれの不渡り事由に応じて法に基づいた迅速な行動をとること、また、取集した情報を自社の全組織に通知することにより、被害を最小限に抑えることが必要です。
また、不渡りが6か月以内に2回起きると銀行取引停止処分となるため、一般的に事実上の倒産とみられることとなります。
不渡事由
手形の不渡りの理由は、次の3つに区分されています。
①第0号不渡事由:手形が適法な定時でないため不渡りになる
振出人の住所や押印など形式的な不備を第0号事由による不渡といいます。この場合には、不備の箇所を支払呈示期間中に補った上で、再度、支払い提示を行います。
②第1号不渡事由:資金不足などの理由により不渡りになる
資金不足や当座口座が解約されている場合などによる不渡を、第1号事由による不渡といいます。債務者の財産の仮差押えなどによる財産保全を行った上で、回収に向けて努力することとなります。なお、手形に裏書人がいる場合には、裏書人に対しても支払いを求めます。
③第2号不渡事由:契約不履行、詐欺、偽造などの理由により不渡りになる
契約不履行、詐欺、偽造などの理由による不渡りを、第2号事由による不渡といいます。 例えば、だまし取られたので、払わないといったケースが、これに該当します。この場合には、裁判で決着をつけることとなります。
手形の更改(ジャンプ)
振り出した支払手形の決済が困難と思われるときは、手遅れにならないうちに手形の所有者と支払期日の延長交渉をする必要が出てきます。手形の所有者との交渉で最低限の延長を受け入れてもらったときは、支払期日のの延びた手形を振り出し、旧手形を廃棄します。これを手形の更改(ジャンプ)といいます。
まとめ
資金の仕事をご紹介が、財務部門が必要とするスキルは、調達の有無と手段を決定する判断力(返済の見積もり計画、会社の財務状況の分析、調達する資金の用途別内訳、そもそも実現可能なのかなど)と金融機関に対する折衝力になります。
企業のキャッシュの現状を把握するためには、経理部門との連携は必須ですが、資金調達の手段にはさまざまな方法があり、どの方法が最適であるかはその企業の状態によっても変わってきます。
そもそも調達する必要があるのか、あるのであればどのような手段でするかを検討する判断力が求められ、そのためには新規事業の利益計画や他部署の財務状況を熟知していなければいけません。
また、金融機関から融資を受ける場合は金利や担保、補助金の場合は申込書・申請書の提出といった問題が出てきますが、できるだけ有利な条件で融資・出資を受けるには論理性、説得力、コミュニケーション能力などの折衝が求められます。
株式の発行やベンチャーキャピタルからの出資といった大規模な資金調達と比べれば、中小企業の資金調達は地味な仕事かもしれませんが、中小だからこそ細かい調整が必要で、むしろ重要度は高いといえます。