経理や財務の部署に所属すると、様々な業務が出てきます。決算を取りまとめ、財務諸表を作り、分析することで次の会社のアクションに繋げるということは、まさに経営スタッフそのものの仕事です。上場会社は四半期(3カ月)ごとに決算を行い、その結果を発表します。開示業務とは、上場企業などが投資家へ向けて提出する開示書類を作成することです。開示書類にはいくつかの種類があり、営業および経理の状況、その他事業に関する重要事項を報告することが目的です。会社についての全般的な内容が網羅されますので、開示書類を作成するためには、経理と他の部署との連携が欠かせません。そこで今回は外部開示業務の決算短信についてご紹介を致します。
決算短信とは
決算短信は、上場会社が決算において、投資家向けに決算の概要をまとめて開示する書類のことです作成の基準は、証券取引所で任意のガイドラインなどを設けていますが、会社法等、法律に規制されるものではなく、会社側が個別に様式等を決めることが出来ます。
短信用財務諸表の作成
決算整理後の最終試算表は、あくまで帳簿の1つです。決算発表用の財務諸表に限りなく近い試算表もありますが、多くの会社では、この最終試算表から、決算発表用の財務諸表への組替え作業を行います。
この財務諸表作成の基準については証券取引所が一定のガイドラインを設けていますが、特段の基準があるわけではありません。現在、多くの会社では、有価証券報告書に準じた財務諸表を提出しています。
また、様式等も、会社の判断で決めることが出来ますので、計算書類や有価証券報告書と比べると、明確で分かりやすい表現になっています。
注記資料の作成
財務諸表の作成とともに、補足資料となる注記事項を作成します。
この注記事項についても、有価証券報告書に記載する内容などをもとに会社の判断で作成しています。
短信用定性資料の作成
各種指標の作成、開示の対象となる重要な事項についての資料を作成します。企業にとってプラスの要因だけではなく、リスク情報といったマイナスの要因を記載する必要もあります。
資料の最終化
①資料の最終確認
各担当者が作成した資料をまとめて、決算短信の仕上げに入ります。この時、財務諸表、注記事項、各資料の間などでリンクする箇所のチェックを行い、資料間の整合性が取れているかの確認を行います。
また、誤字脱字等のミスを防ぐため、最終版については、数人で読み合わせて最終確認をします。
②マネジメント付議
最終化された決算短信について、会社の決済を取るため、取締役会などに付議します。
③開示
証券取引所に決算短信を提出し、決算発表を行いますまた、プレスからの質問などにも対応します。
なお、開示にあたっては、開示情報の取り扱いに関するセキュリティ体制を整備しインサイダー情報の漏洩を防ぐとともに、決算短信を提出するまでのスケジュールや作業チェックリストを作成することにより、適時に開示できる体制を整備することが大切となります。
四半期決算短信の作成
四半期ごとに各証券取引所の様式・記載要領をもとに四半期決算短信を作成します。
四半期決算短信は通期の決算短信と比較し簡素化されたものになっており、連結財務諸表作成会社は連結ベースのもののみを、連結財務諸表非作成会社は連結ベースのもののものを作成します。(ただし、企業の判断で任意に連結財務諸表作成会社が個別財務諸表を添付することは可能となっています。)
決算短信の業務作成フロー
ワンポイント
証券取引所
現在、日本では、札幌、東京、名古屋、大阪、福岡の5か所に証券取引所があります。また、東証のマザーズをはじめ、これらの取引所にはそれぞれ新興市場と呼ばれるものが存在します。
なお、平成19年に証券取引法が金融商品取引法に改正されたことに伴い、証券取引所の法律上の名称は金融商品取引所となっています
まとめ
投資家などへ向けた開示書類を作成する開示業務は、年間を通して複数の書類を継続的に作成していかなくてはなりません。特に、決算短信は決算後45日以内に開示しなくてはなりませんので、作成スケジュールはタイトになります。しかし、開示業務の経験を積むことは、上場企業が増加傾向にあり、開示業務の経験を持つ人材のニーズは、転職に非常に有利に働くといえるでしょう。