日々の会計処理~特別な経費に気を付ける~

 今回はバックオフィス業務である経理の日々の会計処理、特別な経費についてご紹介致します。個人事業主は、「自分の給与」という概念がないため、給与を取って節税するということはできない。個人事業である限り、「事業で最終的に得られた儲け=事業主の給与」となり、この式を変えることはできない。一方、法人税には、「社長の給与」として「役員報酬」という概念がある。法人から役員報酬という給与を、社長自身に支給することが可能なのだ。これは、「法人」と「その法人の代表である社長個人」とは別人格であるからこそ、なせるわざ。これから経理担当者として働きたいと思っている方はぜひ参考にしてみてください。今回はそんな特別な経費で気を付けることについてご紹介致します。

 

特別な経費に気を付ける①

役員報酬や賞与は、支払い方によって経費にならない場合があるので注意が必要です。

  • 業務の内容
    ・会計ソフトへの入力
  • 確認するもの
    ・月別給与一覧表
    ・株主総会議事録
    ・登記事項証明書
  • 必要があれば作成する書類
    ・定時株主総会議事録
    ・事前確定届出給与に関する届出
  • 検索場所
    ・国税庁/[手続名]事前確定届出給与に関する届出

役員報酬の基本を知る

  1. 「役員報酬」が特別な理由
    同族会社の役員は自分で自由に役員報酬を決められるので、利益調整が出来ないように法人税法上の縛りがあります。次の2つの条件に該当しない役員報酬は、「役員賞与」とみなされ、法人税の計算上、損金に算入することが出来ません。役員報酬を損金に算入できないと、役員賞与に対する所得税と損金算入できなかった金額に対する法人税が二十二課税されてしまいます。
    次の2つの条件を満たす役員報酬を、「定期同額給与」といいます。

    1. 1か月以下の一定の期間ごとに支給される給与
    2. その事業年度の「各支給時期における支給額」または「支給額から源泉税などを控除したあとの金額」が同額であるもの

    役員報酬は、年に一度、事業年度終了の日から3か月以内に定時株主総会を開いて決議し、定時株主総会後の最初の給与支給日から変更後の金額を支給します。法人税の申告期限が、期末から2か月以内に定時総会を開催します。実際に株主を招集する中小企業は少ないと思いますが、株主1人という小さな会社でも、必ず定期株主総会議事録を作成し保存しておきます。

  2. 経費に算入できる役員賞与とは
    原則として役員賞与は法人税の損金に算入できませんが、1つだけ例外があります。決算終了後の定時株主総会で来期の賞与の金額と支給日を決めておき、総会の日から1か月以内に「事前確定届出給与に関する届出」を所轄の税務署に届け出た場合に限り、その金額を法人税の損金に算入することが出来ます。これを「事前確定届出給与」といいます。せっかく届出を出しても、実際に支払うときに、1円でも1日でも違ったら全額が損金に算入できないので注意してください。

役員の基本を知る

  • 役員の範囲
    法人税法上の役員の範囲は次の通りです。会社法上の役員だけでなく、「みなし役員」も役員として取り扱います。

使用人兼務役員の判定フローチャート使用人兼務役員の判定フローチャート

※使用人として常勤で働いていない場合には、使用人兼務役員にはならないので注意が必要です。

 

特別な経費に気を付ける②

税務上の「交際費」は一般的なイメージより広いので注意します。。

  • 業務の内容
    ・会計ソフトへの入力
  • 作成する書類
    ・一定の事項を記載した書類

交際費の基本を知る

  1. 「交際費」が特別な理由
    交際費は、損金算入が原則です。交通費など他の経費と違って、会社が取引先を接待しても法人税の費用としては認められません。交際費の損金算入を認めると、もうかった分はの三台に使ってしまい、その分税金が減ってしまうのではないかと懸念されるからです。ただし中小企業(期末の資本金が1億円以下の法人)は、取引先や新規顧客の接待が慣習として定着していることから、次の場合に限り損金算入が認められています。損金んさん勇限度額は、次のうちいずれか多い金額です。会社の任意で、毎年、有利な方を選ぶことが出来ます。

    飲食費基準交際費のうち接待飲食費の額が50%
    (役員や従業員及びその親族に対する接待は除く)
    定額基準交際費のうち、年間800万円以下
  2. 交際費の実質基準とは交際費とは、得意先や仕入先、そのほか事業に関係のある人に対する接待、供応、贈答、これらに類する行為のために支出した費用のことをいいます。得意先だけでなく、特定の社員と食事するような場合も交際費に該当します。税務では交際費の範囲を、一般的に考える範囲より広くとらえます。例えば特定の従業員と食事をした場合も、交際費になります。交際費の損金算入には限度額があるので、内容を確認し、交際費に該当しない経費は別の科目を使って仕訳するように心がけます。

    科目名内容
    福利厚生費従業員の半分以上が参加する運動会・演芸会などに通常かかる費用、従業員の半分以上が参加する4泊5日以内の社員旅行、社内の忘年会などの備品(現金を渡し場合は給与)
    広告宣伝費カレンダー・手帳・扇子・うちわ・手ぬぐいなどの通常の制作費用、一般消費者を旅行や観劇に招待する費用、工場見学者などに試飲・試食してもらう費用、得意先などに提供する見本品や試供品の費用
    会議費会議に関連して茶菓子・弁当などの飲食物を供与するための通常の費用
    売上割戻し得意先である事業者に対し、売上高などに応じて一定の基準で支出する費用
    取材費新聞・雑誌などの出版物または放送番組を編集するために行われる座談会、そのほか記事の収集のための費用
    寄附金事業に直接関係のないものに対する金品の贈与
  3. 交際費の形式基準とは
    得意先への接待であっても、1人あたり5,000円以下の接待飲食費は「一定の事項を記載した書類」を保存していれば交際費から除外することが出来ます。これを「接待交際費における5,000円基準」と言います。「一定の事項」は、領収書の裏などに記入しておけば大丈夫です。特に交際費の多い会社はその都度豆に記入するよう心がけましょう。ただし、自社の役員や従業員(親族含む)を接待するための接待飲食費は、5,000円基準を満たしていても交際費となります。

    1. 飲食などをした年月日
    2. 飲食などに参加した人の氏名・名称と関係性
    3. 飲食などに参加した人の数
    4. 金額と飲食店などの名称・所在地
    5. その他参考となるべき議案

    交際費に該当するもの

    下記のような取引は、交際費として処理をしなければなりません。

    1. 取引先などの従業員に対し、謝礼などを現金で支払った場合
    2. 取引先を接待に送迎するためのタクシー代や接待からの帰りに自分が使用するタクシー代
    3. 業務と関連のない海外視察旅行。ただし、業務を行う上で必要な研修や調査、現地の会社訪問などの工程表や証憑を保存していれば、研修費等で処理

 

特別な経費に気を付ける③

高額かつ長期間使用する備品は、資産として計上します。

  • 業務の内容
    ・会計ソフトへの入力
  • 確認する書類
    ・請求書
    ・納品書
    ・見積書
    ・領収書
  • 検索場所
    ・国税庁/減価償却/耐用年数表

固定資産の基本を知る

  1. 「固定資産」が特別な理由
    パソコンの購入やエアコンの修理などを仕訳するとき、「固定資産」なのか販売用の「商品」なのか、それとも「消耗品」や「修繕費」なのか、経理担当者が判断しなければなりません。固定資産なら貸借対照表の「固定資産の部」に、商品なら損益計算書の「仕入高」に、修繕費なら損益計算書の「販売費および一般管理費」に計上します。固定資産は、経理の判断の一つで会社の利益や資産の総額が変わってしまう重要なポイントです。固定資産かどうかは、次のように判断します。

    ①販売目的で購入した資産か固定資産は、会社が事業のために自ら使用することを目的としちぇ購入する者。h頑張亥目的で購入するものは一旦仕入として仕訳し、期末に売れ残っていたら貸借対照表の「棚卸資産」に計上する
    ②使用期間が1年以上か1年未満の短期間で使用する場合は固定資産に計上せず、「消耗品」や「事務用品」などの費用として仕訳する
    ③取得価格が10万円以上か10万円未満で購入した什器や備品は、「消耗品」や「事務用品」などの費用として仕訳する
    ④単なる修理か価値の増加か固定資産を維持管理したり、原状復帰するための支出は修繕費として仕訳する。しかし固定資産の使用可能期間を長くしたり、固定資産の価値を増加させるような支出は、修繕費ではなく「固定資産」として、貸借対照表の資産の部に計上する

    10万円以上20万円未満の資産(一括償却資産)

    10万円以上かつ20万円の固定資産は、資産ごとに減価償却せずまとめて3分の1ずつを費用化できます。これを「一括償却資産」といいます。一括償却資産として処理するか、通常の減価償却資産として処理するかは、会社が任意に決めることが出来ます。

  2. 修繕人の違いをマスターする
    修繕費として支出した費用が、固定資産(資本的支出)に該当するのか、そのまま修繕費として計上して良いのかは、次のように判断します。

    固定資産として計上すべきもの物理的な建物の増改築、ソフトウェアのバージョンアップ、品質多性能の高い部品への取替費用(通常の取替費用を超える部分に限る)
    修繕費として計上できるものオフィスの蛍光灯をLEDに取り替える費用、建物の解体費用、機械装置の移設費用、アパートの壁紙など現状復帰の費用
  3. 固定資産の取得価額とは
    固定資産を購入したら、本体価格だけでなく、取得に付随して発生する支出も費用ではなく固定資産の一部として資産の部に計上しなければなりません。具体的には、設備の設置費用・購入手数料・関税・運送保険料などが該当します。

    ただし、次のような支出は試算ではなく費用として計上することが出来ます。

    1. 不動産取得税又は自動車取得税
    2. 登録免許税そのほか登記や登録のための費用
    3. 調査費用や測量、設計、基礎工事などで、建設計画を変更した為不要となった費用
    4. 違約金
    5. 借入金の利子

    30万円未満の減価償却資産を購入した時(少額資産の特例)

    令和2年3月31日までの間に、青色申告をしている中小企業(資本金の額が1億円以下で、かつ常時雇っている従業員の数が1,000人以下の会社等)が、30万円未満の減価償却資金を購入して事業の用に供した場合、1度に全額を損金として処理することが出来ます。ただし、1年間に費用として計上できるのは、300万円が限度です。

 

特別な経費に気を付ける④

間違えやすい消費税のポイントは、「課税仕入」になるかならないかです。

  • 業務の内容
    ・会計ソフトへの入力
  • 用意する書類
    ・請求書
    ・領収書

課税仕入れの基本を知る

  1. 課税入れになる「会費」ならない「会費」
    会費が消費税の仕入税額控除の対象かどうかは、領収書の名目に惑わされず、耐火性があるかどうかを実態で判断します。

    取引の内容消費税の処理
    セミナーや勉強会の参加費課税
    懇親会や食事会の参加費課税
    同業者団体や組合の会費(業務運営に使われるもの)不課税
    同業者団体や組合の会費(対価性があるもの)課税
    同業者団体や組合の会費(業務運営に使われるもの)不課税
    同業者団体や組合の会費(対価性があるもの)課税
    ゴルフクラブやレジャー施設を利用するための入会金課税
  2. 課税仕入になる「交際費」ならない「交際費」
    取引の内容によって、課税仕入か否かを判断します。

    取引の内容消費税の処理
    得意先やその役員などに対し、「現金」で支出する祝金や見舞金・香典・不祝儀など不課税
    得意先や取引先に対して贈答する商品券やビール券・プリペイドカードなどの物品切手類非課税
    運転手や旅館の女中・ゴルフ場のキャディさんに対するチップ不課税
    ゴルフプレー代と一緒に支払うゴルフ場利用税不課税
    海外や免税店で購入した贈答品免税
    使途不明な交際費不課税

     

  3. 課税仕入になる「燃料費」ならない「燃料費」
    利用明細書が課税になっているかどうかで判断します。

    取引の内容消費税の処理
    ガソリン代課税
    軽油代金課税
    軽油引取税不課税
  4. 課税仕入れになる「手数料」ならない「手数料」
    消費者などから、クレジットカードを使って売上代金を回収すると、その代金はクレジット会社等の信販会社から手数料を差し引かれて振り込まれます。正確に言うと、これは信販会社が「売掛債権」を安く買い取ったために、差額が発生しているにすぎません。したがって、売上代金と入金額は、債権を売り渡したことによる債権売却損に該当し、課税仕入になりません。ただし、クレジット会社によっては、「収納代行」を依頼している場合もあり、その場合は消費税の課税仕入になります。どちらか分からない場合は請求書をよく見て、消費税が請求されているかいないかで判断します。
  5. 課税仕入になる「家賃」ならない「家賃」
    家賃や地代を支払うときは、契約や取引の内容によって、消費税が課税仕入になるものとならないものがあるので注意が必要です。
取引の内容消費税の処理
土地の使用料(1か月未満の短期を除く)非課税
土地と建物を同時に借りている場合建物として課税
居住用の建物非課税
駐車場代(青空駐車場を除く)課税
アパートやマンションに併設されている駐車場非課税
礼金や更新料(居住用)不課税
保証金や敷金(あどで返還されるもの)不課税
不動産業者に支払う手数料課税

居住用の建物に対する家賃が課税仕入れか否かは、賃貸借契約書の利用目的欄に記載されている内容で判断します。事務所や店舗など事業用と記載されていれば課税仕入れになります。実際の使用状況が事業用であっても、恵沢所の利用目的が居住用であれば非課税となります。

 

まとめ

 今回はバックオフィスである経理業務の特別な経費で気を付けるべきポイントについて説明をしましたがいかがでしたか。個人事業主が事業を行う上で、経費は必ず発生するものです。ただし、帳簿上、すべての出費が経費として認められるわけではなく、経費として計上できる条件があります。また、自宅で仕事をしている場合には、家賃やインターネット料金などを家庭用と事業用とに適切に按分することで、経費として算入することも可能です。経費の種類や、青色申告と白色申告の控除の違いなどを知って、日頃から節税効果につながる帳簿記帳や書類保管をするようにしましょう。管理業務の負担を減らすためには、クラウドサービス等の業務効率化ツールを導入してみるのも1つの方法です。そういったお金の管理の仕事を円滑に行うには、簿記の資格取得がおすすめです。働きながら勉強できる資格なので、経理担当としての成長を願うなら資格取得や複業で他社の業務に携わってみてはいかがでしょうか。

日々の会計処理
最新情報をチェック!