年末調整の基本~年末調整の流れ~

 今回はバックオフィス業務である年末調整の流れについてご紹介致します。会社が給与を支払うときに、従業員の給与や賞与(ボーナス)から所得税を徴収することが「源泉徴収」です。本来徴収すべき所得税の一年間の総額を再計算し、源泉徴収した合計額とあらためて比較することで、「過不足金額」を調整することが「年末調整」です。仮に余分に源泉徴収をしていた場合、その差額は従業員に還付される、という仕組みです。毎年必ずやってくるそんな年末調整。取り扱う申告書も多く、人によって必要な書類が変わるために、複雑で時間のかかる業務になりがちです。しかも年に1回の作業ともなれば、細かな作業がうろ覚え・・・なんてこともあるかもしれません。この時期になると、うんざりする担当者も多いのではないでしょうか。今回はこういった年末調整の基本についてご紹介致します。

 

年末調整の流れについて

年末調整の準備は、11月の上旬からスタートします。

  1. 翌年分の「扶養控除申告書」、今年分の「配偶者控除申告書」「保険料控除申告書」を配布する
    「扶養控除申告書」は全員に、あとの2つは年末調整が必要な人だけに配る
  2. 配布した各種書類を回収する
    マイナンバーの取扱いに注意が必要です。2年目以降の住宅ローン控除を受けたい人からは「住宅借入金特別控除申告書」を受け取る
  3. 回収した各種書類を用意する
    記入漏れや印鑑の押し忘れが無いか確認する。また各証明書の添付漏れがないか要注意です
  4. 今年分の扶養控除申告書を用意する
    今年分の「扶養控除申告書」は1年前に回収してあるはずなので用意する。2年分の申告書を見比べながら住所や扶養家族情報に変更がないかを確認する
  5. 年末調整の計算をする
    年間の給料・賞与を合計して、その年の給与の支給総額を計算します。次に保険料控除などの控除額をマイナスして、課税すべき所得金額を算出します。この課税すべき金額に所得税率を掛けて、その年の支払うべき所得税額を計算します。その金額と、毎月の給与や賞与から天引きした源泉所得税の合計額との差額を計算し、不足していれば徴収し、天引きしすぎている場合は還付します。
  6. 年末調整の結果や根拠を記載した必要書類を作成する
    年末調整の計算根拠が一目でわかる「源泉徴収簿」、各人に交付する「源泉徴収票」、市区町村に提出する「給与支払報告書」等をつくる。これらの書類は、年末調整をしなかった人の分も作成が必要です。
  7. 12月の給料または賞与の金額に、年末調整の金額を加算または減算します
    給与明細書または賞与明細書に、年末調整の金額を記載します。
  8. 源泉徴収票を交付する
    12月分の「給料明細書」または「賞与明細書」と一緒に「源泉徴収票」を渡します。「源泉徴収票」は年末調整をしなかった人にも交付が必要です。
  9. 納付書を作成し、源泉所得税を納付する
    12月分の納付すべき源泉所得税から、年末調整で買減算した金額をプラス・マイナスします。従業員に還付した金額だけ納付する税金が減るので、会社が損をしたり得をしたりすることは無いです。
  10. 「給与支払報告書」を市区町村に提出する
    翌年1月31日までに、従業員や役員の住民所在地の市区町村に提出します。各市区町村は、この「給与支払報告書」をもとに、各人の翌年の住民税を計算します。
  11. 法定調書合計表を作成する
    年収が150万円超の従業員などの「源泉徴収票」を税務署に提出します。

年末調整と確定申告の違い

  • 年末調整は会社による確定申告の代行
    給与所得者に限らず、不動産収入があったり、株を売ってもうかったりした人は、毎年3月15日までに、自分で所得税を計算して、税務署に申告しなければなりません。これを「確定申告」といいます。しかし、会社員の場合は、会社が個人の代わりに税務署へ申告・納税を行うことになっています。これを「年末調整」といいます。ただし次のような場合には、年末調整だけでは申告納税は完結しないので、年末調整にプラスして確定申告も行わなければなりません。
  1. メインの会社以外の会社からも、20万円超の給与をもらっている
  2. 副業をしたり、不動産を貸していて、給与以外の所得が20蔓延んを超えている
  3. 同族会社の役員などが、給与以外に自分の会社から不動産収入をもらっている
  4. 医療費控除やふるさと納税など、年末調整ではできない所得控除を受けたい
  5. 初年度の住宅ローン控除など、年末調整ではできない所得控除を受けたい

年末調整の対象となる人ならない人

  1. 対象になるの人
    「扶養控除申告書」を会社に提出し、給料計算時に甲欄を適用して源泉税を計算している人
  2. 対象にならない人
    給与の計算時に、「乙欄」や丙欄」を適用して源泉所得税を計算している人は対象外です。「扶養控除申告書」を提出している人でも、給与の収入金額が2,000万円を超える人などは、年末調整をしません。対象外となった人は、自分で翌年3月15日までに最寄りの税務署で確定申告をし、月々の源泉徴収税額とのさがくを生産することになります。

締め日などの関係で、働いた月と支給日が異なる場合

あくまで支給日ベースで考えます。例えば、月末締めの翌月15日支給という場合には、支給した月ベースで、1月~12月の給与を集計します。一方、会計帳簿には、発生ベースで締め日の月に記帳している会社が多いので、混同しないように気を付けます。

 

まとめ

 今回は年末調整の中でも年末調整の流れについての基本的なを説明をしましたがいかがでしたか。年末調整は法改正の影響を受けやすく、ほぼ毎年何らかの改正が行われていると言って過言ではありません。その都度申告書の様式等も変更され、これまでも、マイナンバー制度の導入や配偶者控除および配偶者特別控除の改正などで、申告書の様式や計算方法の変更が繰り返し行われてきました。法改正が実施される際には特に注意し、年末調整実施に影響はないか、しっかり確認しましょう。また、もし法改正による影響を受けた場合には、遅くとも申告書を配布する際には「どのように変更されるのか」について従業員へ告知することも重要です。いずれにせよ、年末調整をスムーズに実施・完了させるためには、早い段階での準備や着手が鍵となります。できるだけ前倒しにスケジュールを組み、実施していきましょう。そういった給与計算の仕事を円滑に行うには、社会保険労務士の資格取得がおすすめです。働きながら勉強できる資格なので、給与計算の担当としての成長を願うなら資格取得や複業で他社の業務に携わってみてはいかがでしょうか。

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