年末調整の基本~年末調整の計算をする~

 今回はバックオフィス業務である年末調整の計算についてご紹介致します。給与支給額・社会保険料・源泉徴収税額の集計します。従業員に支払った1年間(1月~12月)の給与支給額から年間収入額を算出します。この際、給与から控除した社会保険料や源泉徴収した所得税も集計します。この時期になると、うんざりする担当者も多いのではないでしょうか。今回はこういった年末調整の基本についてご紹介致します。

 

年末調整の計算をする

申告書に記載されている内容に沿って、最終的に納付すべき所得税を計算します。

  • 配布する書類
    ・一人別源泉徴収簿
    ・源泉徴収票
    ・年末調整課不足一覧表
  • 検索場所(給与所得控除の速算表)
    国税庁/タックスアンサー/給与所得控除
  • 業務の時期
    ・最終の給与または賞与支給日の1週間前まで
  1. 年間の給与総額を合計する
    その年に支払った給料の金額を合計して、給与総額を計算する。中途入社の人は、前職分の金額も合算する。
  2. 給与所得控除後の額を計算する
    給与所得の金額は、年間の給与総額から給与所得控除の金額をマイナスして計算する
  3. 社会保険料の金額を集計する
    給与から天引きした健康保険・厚生年金・雇用保険の金額を集計する。中途入社の人は、前職分の給与の金額も合算する
  4. 扶養控除の金額を計算する
    基礎控除の金額に扶養控除や障碍者控除等人的控除の金額を合算する
  5. 保険料控除の金額を計算する
    生命保険や地震保険の控除額を計算する
  6. その年の課税所得を計算する
    上記②「給与所得控除後の額を計算する」の給与所得控除後の金額から各種所得控除額をマイナスして計算する
  7. 算出所得税の金額を計算する
    所得に応じた所得税率を掛けて計算する
  8. 住宅ローン控除の金額を計算する
    2年目以降の人のみ、年末調整で計算できる
  9. その年の年調年税額を計算する
    上記⑦「算出所得税の金額を計算する」で計算した税額から上記⑧「住宅ローン控除の金額を計算する」の控除額をマイナスし、復興特別所得税2.1%を掛けて計算する
  10. 給与から天引きした所得税を合計する
    その年に給料と賞与から天引きした源泉徴収税額を集計する。中途入社の人は、前職分の税額も合算する。
  11. 年末調整の課不足額を計算する
    上記⑨「その年の年調年税額を計算する」で計算した金額と上記➉「給与から天引きした所得税を合計する」の金額の差額を還付または徴収する

年末調整の計算手順の基礎を知る

  1. 給与所得控除後の金額を計算する
    サラリーマンにも一定の経費を認めましょうというのが「給与所得控除」です。

    給与所得控除後の金額=給与の額面金額-給与所得控除の金額

    給与所得控除の金額は下記の表で計算します。

    給与所得控除の金額

    給与等の収入金額
    (給与所得の源泉徴収票の支払金額)
    給与所得控除額
    180万円以下収入金額×40%-10万円
    55万円に満たない場合には55万円
    180万円超~360万円以下収入金額×30%+8万円
    360万円超~660万円以下収入金額×30%+44万円
    660万円超~850万円以下収入金額×30%+110万円
    850万円超195万円(上限)
  2. 社会保険料控除の額を計算する
    給与から天引きした健康保険・厚生年金・雇用保険の金額を集計します。「保険料控除申告書」に記載されている数字を確認しながら金額も加算します。
  3. 扶養控除の額を計算する
    「扶養控除申告書」を確認しながら計算します。
  4. 保険料控除の額を計算する
    「保険料控除申告書」に記載されている数字を確認しながら、控除額を計算します。
  5. 課税所得金額を計算する
    給与の支給総額から、所得控除額をマイナスして、課税される所得金額を計算します。

    給与所得控除後の金額-社会保険料の額-基礎控除の額-人的控除の額-保険料控除の額
    =課税される所得金額(千円未満切り捨て)
  6. 算出所得税の金額を計算する
    各人の所得税を計算します。次の速算表で簡単に計算できます。

    所得税の速算表

    課税される所得金額税率控除額
    195万円以下5%0円
    195万円超~330万円以下10%97,500円
    330万円超~695万円以下20%427,500円
    695万円超~900万円以下23%636,000円
    900万円超~1,800万円以下33%1,536,000円
    1,800万円超~4,000万円以下40%2,796,000円
    4,000万円超45%4,796,000円
  7. 住宅ローン控除の額を計算する
     住宅ローン控除は、初年度は確定申告をしなければなりませんが、2年目以降は年末調整で控除できます。住宅ローン控除を受けたい人から「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」のうち、該当する年度分と金融機関から発行してもらった「住宅ローンの残高証明書」を提出してもらいます。
    生命保険料控除などの所得控除は、所得の金額をマイナスしますが、住宅ローン控除は税金の額をダイレクトにマイナスして計算します。所得税の計算が出来たら、復興特別所得税2.1%を掛けて、最終的に給与所得者本人が納付すべき「年調年税額」を計算します。

    年調年税額=(算出所得税額-住宅ローン控除の額)×102.1%
  8. 所得税の課不足額を計算する
     次に給料や賞与から天引きした所得税の額を集計します。中途入社の人は、っ前職の「源泉徴収票」に記載されている税額も加算します。年調年税額との差額を計算し、不足していれば徴収し、多い場合は還付します。

 

まとめ

 今回は年末調整の中でも年末調整の計算についての基本的な説明をしましたがいかがでしたか。年末調整は、源泉徴収簿と従業員から回収した申告書類の内容をもとに、従業員一人ひとりの1年間の給与および源泉徴収した所得税額を再計算し、過不足分の調整を行います。管理業務の負担を減らすためには、クラウドサービス等の業務効率化ツールを導入してみるのも1つの方法です。そういった給与計算の仕事を円滑に行うには、社会保険労務士の資格取得がおすすめです。働きながら勉強できる資格なので、給与計算の担当としての成長を願うなら資格取得や複業で他社の業務に携わってみてはいかがでしょうか。

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