新たにテレワーク(リモートワーク)を導入しようとする事業者や、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて急いでテレワークを導入したものの、導入について十分な検討をする時間がなかった事業者向けに、テレワークに伴って生じうる人事評価・労務・法務・情報セキュリティに関する問題点を簡単に記載致します。今回は、テレワーク導入に活用できる助成金などについて、テレワーク(リモートワーク)の導入手順時の国からの助成金があるほか、地方自治体においても独自の取り組みが行われておりますので、そちらについてをご紹介致します。
テレワーク導入で活用できる助成金
テレワークの導入にあたっては、モバイルPCの購入はITツールの導入、通信費等、様々な費用が掛かります。テレワークは生産性向上や働き方改革につながることから、テレワーク導入費用への補助のため、国や各自治体から各種助成金が用意されています。
ここでは、代表的な助成金をご紹介※2020年6月の情報です。
いずれも取り組みのハードルは高くなく、テレワークを導入する企業にはオススメの助成金となっています。
なお、「はじめてのテレワーク(テレワーク導入促進整備補助金)」は東京都の事業者のみが対象となりますが、同様の補助金は多くの地方自治体で行われています。一度事業所所在地の自治体にテレワークに関する補助金があるかも調べてみると良いと思います。
働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)
概要と支給対象
労働時間の改善やワークライフバランスの推進のため、在宅又はサテライトオフィスでのテレワークに取り組む中小企業主に対して、実施に要した費用の一部を助成する制度です。支給対象となる事業主は、次のいずれにも該当する事業主です。
- 労働災害補償保険の適用事業主であること
- 次のいずれかに該当する事業主であること(下記の表参照)
産業分類 資本金の額・出費総額 常時雇用する労働者数 小売業(飲食店を含む) 5,000万円以下 または 50人以下 サービス業 5,000万円以下 100人以下 卸売業 1億円以下 100人以下 その他の業種 3億円以下 300人以下 - テレワークを新規で導入する事業主(※試行的に導入している事業主も対象です)、またはテレワークを継続して活用する事業者であること
支給対象となる取組には下記が挙げられます(いずれか一つ以上実施する必要があります。)
- テレワーク用通信機器の導入・運用(※)
- 保守サポートの導入
- クラウドサービスの導入
- 就業規則・労使協定等の作成・変更(テレワーク勤務に関する規定の整備)
- 労務管理担当者や労働者に対する研修、周知・啓発
- 外部専門家(社会保険労務士など)によるテレワーク導入コンサルティング
※シンクライアント端末(パソコン等)の購入費用は対象となりますが、シンクライアント以外のパソコン、タブレット、スマートフォンの購入費用は支給対象となりません。
成果目標の設定
支給対象となる取り組みは、以下の「成果目標」をすべて達成することを目指して実施する必要があります。
- 評価期間に1回以上、対象労働者全員に、在宅又はサテライトオフィスにおいて就業するテレワークを実施させる。
- 評価期間において、対象労働者が在宅又はサテライトオフィスにおいてテレワークを実施した日数の習慣平均を、1日以上とする。
成果目標の達成の有無は、事業実施期間(助成金交付決定の日から令和3年2月15日まで)の中で、1カ月から6か月の間で設定する「評価期間」で判断します。評価期間は申請者が事業実施計画を作成する際に自ら設定します。
支給額
支給対象となる取り組みの実施に要した経費の一部が、目標達成状況に応じて支給されます。※下記例を参照
例えば、労働者100人の企業で企画部門5人に1人当たり30万円のききを導入する場合、
成果目標達成の場合⇒20万円×5人=100万円を助成
成果目標未達成の場合⇒10万円×5人=50万円を助成
上記計算に基づき、助成されます。
成果目標の達成状況 | 達成 | 未達成 |
---|---|---|
補助率 | 75% | 50% |
1人当たりの上限額 | 20万円 | 10万円 |
企業当たりの上限額 | 150万円 | 100万円 |
目標達成状況と支給額
申請期限
申請期限は令和2年12月1日(火)までです。なお、支給対象事業主数は国の予算額に制約されるため、12月1日以前に受付を締め切る場合があります。
はじめてテレワーク(テレワーク導入促進整備助成金)
概要と支給対象
都内の中堅・中小企業などに対して、環境構築経費、および制度整備費を補助してテレワークの導入促進を図る制度です。支給対象となる事業主は、次の全てに該当する事業主です。
- 東京都が実施するテレワーク導入に向けたコンサルティングを受けている都内の事業者であること
- 都内に勤務する常時雇用する労働者を2人以上999人以下、かつ6カ月以上継続して雇用していること
- 就業規則にテレワークに関する規定が無いこと
- 都が実施する「2020TDM推進プロジェクト」に参加していること
対象となる取り組みと支給額
いずれか一つではなく、下記の両方の取り組みを行う必要があります。
- テレワーク環境の構築
在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィス勤務を行うための環境構築費用です。下記の二つが該当します。
・東京都が別途管理・提供する「テレワーク導入プラン」ホームページより選定したテレワーク環境を構築するための機器・関連ソフトなど導入費用
・モバイル端末等整備費用 - 就業規則へのテレワーク制度整備
テレワークに関する規定を就業規則に定めることに要する専門家への委託費です。
支給額には取り組みと事業者の規模に応じて設定されます(下記の表参照)。対象となるのは支給決定日から3か月以内に完了する取組です。
補助事業 | 事業者の規模 | 補助金の上限 | 補助率 |
---|---|---|---|
テレワーク環境の構築 | 従業員数300~999人の事業者 | 100万円 | 100% |
従業員数100~299人の事業者 | 60万円 | ||
従業員数100人未満の事業者 | 30万円 | ||
就業規則へのテレワーク制度整備 | 全従業員規模共通 | 10万円 |
申請受付期間
申請受付期間は令和2年4月8日(水)から令和3年3月31日(水)です(締切日必着)。予算の範囲を超えた場合は、申請受付期間内でも受付を終了します。
コラム
市区町村でもテレワーク導入の助成金を用意していることも
新型コロナウイルスによる感染症への対策として、国、都道府県だけでなく、市区町村でもテレワーク導入のための助成金を用意しているケースがあります。例えば、神奈川県の横浜市では、「職場環境向上支援助成金<新型コロナウイルス特例 テレワーク導入特例あり>」を用意しています。その概要は下記の通りです。
- 募集期間
令和2年4月15日~令和3年1月31日
※予算枠に達した時点で募集を終了します。 - 助成対象者
(1)本社をしないとする会社であること
※新型コロナウイルス感染症によるテレワーク導入特例に限り、個人事業主も対象となります。
(2)常時雇用する従業員が2名以上であること。 - 助成対象事業(※テレワーク導入整備に関するもののみ)
・テレワーク導入に関する専門家へのコンサルティング委託料
・システムの設計・構築・サポート、危機の導入・設置・保守、勤怠管理システムに導入などの費用
・テレワーク導入に関する機器等のリース料
・テレワーク導入に関sるソフトウェアの使用料 - 助成率
50%(新型コロナウイルス感染書特例の場合75%)
このように国や都道府県だけでなく、各市区町村でもテレワークに関して助成金が用意されている場合があります。テレワークの導入を検討している企業は、インターネット上で「自社の本社が所在する自治体名+テレワーク」等のキーワード検索してみると情報が集めやすいです。
まとめ
上記までにご紹介致しました通り、テレワークを実施については労災・安全衛生について頭を抱える方も多いのではないでしょうか。企業はテレワークの就労形態に伴った対応が必要となります。テレワークの推進には、就業規則等の制度面だけでなく、従業員のITリテラシー向上も必要です。この機会にITスキルの可視化を行ってみてはいかがでしょうか?