テレワーク可能な業務と不可能な業務はどのように振り分ければいいのか

 新たにテレワーク(リモートワーク)を導入しようとする事業者や、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて急いでテレワークを導入したものの、導入について十分な検討をする時間がなかった事業者向けに、テレワークに伴って生じうる人事評価・労務・法務・情報セキュリティに関する問題点を簡単に記載致します。今回は、テレワーク導入にあたって、テレワーク可能な業務はどのように振り分ければいいのかについてご紹介致します。

 

テレワーク可能な業務の検討


 テレワーク可能な業務と不可能な業務は、その業務をテレワークで実施した時に生じるリスクを評価して振り分けます。しかし、各社で行っている業務は多様であり、テレワークの可否について汎用性が高く網羅的な基準を設定することは容易ではありません。他方、全ての業務をリストアップして個別に判断することも現実的ではありません。

そこで、サンプルとして取り上げた自社の具体的な業務をもとに、いくつかのカテゴリーを設定して判断していく方法をご紹介致します。手順は以下の通りです。

  1. サンプルとして、特定の業務における業務を全てリストアップする
  2. テレワークの難易度を表すラベルとしていくつかのカテゴリーを設定する
  3. 各カテゴリーに共通する要素を抽出する
  4. リストアップした業務の分類結果を再整理する

 

カテゴリーによる整理の手順


①業務のリストアップ

サンプルとして特定の事業を選定し、まずは当該事業に関連するぎょうむを機械的にすべてリストアップします。今後の検討における基礎データになるのである程度網羅的に記載する必要がありますが、記載の粒度は過度に神経質になる必要はありません。事業側の社員が、通常業務を行う上で理解している粒度に基づいて列挙できていれば十分です。実際にテレワーク可能な業務を選別するのは事業側の社員です。事業側の社員の認識を尊重した方が良いです。

②カテゴリーの設定

次に、テレワークの難易度を表すラベルとしていくつかのカテゴリーを設定します。カテゴリーの数は自由に設定していただいて結構ですが、ここでは、例として4つのカテゴリーに分けます。

そして、それぞれのカテゴリーに対して定義づけを行います。例えば以下のイメージです。

カテゴリー1:テレワークを行うことが非常に容易な業務

カテゴリー2:テレワークを行うことが比較的容易な業務

カテゴリー3:テレワークを行うことが比較的困難な業務

カテゴリー4:テレワークを行うことが非常に困難な業務

コラム

テレワークが容易な業務の具体例

総務省の「導入手順書」では具体的に対象業務の例を記載しています。これらのリストに基づいてテレワーク対象業務を選定することは、短時間で制度を導入する上では一つの方法です。

  1. 資料の作成・修正及び管理(企画書、報告書、議事録等)
  2. 上司や同僚、顧客先や取引先等との連絡・調整(電話、メール等)
  3. 社内手続き
  4. 承認等の意思決定
  5. 電話、会議支援システム等を用いた社内(進捗会議、意見交換等)
  6. 電話、会議支援システムを用いた社外関係者(取引先等)との会議
  7. 部下・後輩等への指導(メール、チャット、TV電話)
  8. インターネット等からの情報収集(情報検索、調査等)
  9. 業務知識等の学習(e-learning、資料閲読等)

※総務省「情報システム担当者のためのテレワーク導入手順書」より

③カテゴリーに分類

続いて手順①でリストアップした業務を、手順②で設定したカテゴリーに分類していきます。この後、手順⑤として「リストアップした業務の分類結果を再整理する」プロセスが控えていることから、ここではある程度感覚的に分類していくことをお勧めします。

一般的には「物理的な接触の必要性」「情報の機微度」等を考慮して決定されることがあります。しかし自社特有の要素を十分に考慮するためにも、最初から前提条件を置くことはお勧めしません。「これって本当に出社してやる必要があるだろうか?」とゼロベースで再検討を行うことで、新たな解決策が出てくる可能性があります。

コラム

カテゴリー数

 カテゴリーを設定する上では事業側の社員にインタビュー等を行い情報収集することになると思います。インタビューを実施する側は当該取り組みについてある程度理解が深まっていると思いますが、インタビューを実施される側はそうとは限りません。そのような状況で、多数のカテゴリーや難解なカテゴリーの定義を示されても事業側の社員は困惑してしまいます。そこで、カテゴリーの数を4つ程度に絞り、

  • テレワークを行ことが「容易」か「困難」に分ん類するとしたらどちらですか?
  • テレワークを行うことが「容易(困難)」としたものを、難易度に基づいて更に二つのグループに分けるとしたらどのように分けられますか?

といった形で質問をすることで、多少は事業側の社員も回答がしやすくなります。

④要素の抽出

手順③を通して出来上がった「各カテゴリー」と「各カテゴリ-に分類された業務」をもとに、各カテゴリ-に共通する要素を抽出します。それぞれの具体的な項目に共通する要素を見つけ出し、抽象化することで抽出します。

⑤分類結果の再整理

手順④で抽出した要素に従い、分類していた業務鵜を再分類します。最初に「この業務は絶対にテレワークにはできない」と思っていた業務が抽出した要素から見てみると「テレワークを行うことが比較的容易な業務と評価されることもあるかもしれません。業務そのものではなく業務の要素から判断することで、思い込みを排して判断することが出来るようになります。

 

取り組みにおける留意点


設定した分類に基づき、テレワークの難易度が低いものからはじめ、順々にその範囲を広げていきましょう。この取り組みにおいて障害となるのは「この業務は絶対にテレワークにはできない」といった思い込みや先入観です。テレワークの障害となっている原因を取り除くことはできないか、との視点から検討を行いましょう。

 

まとめ


 上記までにご紹介致しました通り、テレワークを実施については情報セキュリティについて頭を抱える方も多いのではないでしょうか。企業はテレワークの情報セキュリティへの対応が必要となります。テレワークの推進には、就業規則等の制度面だけでなく、従業員のITリテラシー向上も必要です。テレワークの分類を行うにあたって先入観や思い込みが邪魔になることがありますので、なるべく先入観や思い込みを取り除けるよう仕組化して分類分けしてテレワークを推進していきましょう。

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