テレワークでうつ病に!これは労災になる??

 新たにテレワーク(リモートワーク)を導入しようとする事業者や、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて急いでテレワークを導入したものの、導入について十分な検討をする時間がなかった事業者向けに、テレワークに伴って生じうる労務・法務・情報セキュリティに関する問題点を簡単に記載致します。今回は、テレワーク中に誰とも会話できずに気分が落ち込んだ従業員がうつ病を罹患した場合は労災になるのか、テレワーク(リモートワーク)の導入手順時の労災・安全衛生のギモンについてをご紹介致します。

 

テレワーク中のメンタルヘルス罹患の考え方


新型コロナウイルスの感染拡大により、会社としては従業員の安全に配慮するため在宅勤務を行わせたといったところも多いかと思います一方で、長期間にわたり在宅勤務を行うといったことが初めての場合、慣れていない一人での行が続き、どうしても気がめいってくるということもあるかもしれません。実際に新型コロナウイルスにより在宅勤務を長期間にわたり行っている方がインターネット上で「在宅勤務をしていると気が滅入ってきた」「一人で業務をしていると孤独を感じる」といった投稿をしているものを見かけます。

こうした在宅勤務中にうつ病に罹患した従業員が出た場合、会社が在宅勤務を命じている場合にには労災に認定されるのでしょうか。まず、うつ病を含む精神障害の労災認定要件としては、下記の要件があります。

  1. 認定基準の対象となる精神障害を発病していること
  2. 認定基準対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に業務による強い心理的負荷が認められること
  3. 業務以外の心理的負荷や個体側要因による発病したとは認められないこと

うつ病については、①の認定基準の対象となる精神障害に含まれていているので、1は満たすことになります。一方、②の「業務による強い心理的負荷」というものに照らして判断していきます。これによれば、例えば、発病直前の1カ月前におおむね160時間以上の時間外労働を行っている場合や、発病直前の3週間におおむね120時間以上の時間外労働を行った場合等の極めて長時間の労働時間であった場合等は強い心理的負荷があったとして、当てはまります

また、長時間労働の他、「業務に関連し重大な事故を目撃した」「会社の経営に影響する重大なミスをした」「達成困難なノルマが課された」等も心理的負荷に該当するとされ、程度に応じて「強い心理的負荷」と判断される場合もあります。この業務による心理的負荷評価表によれば、「勤務形態に変化があった」場合も心理的負荷の一つとして挙げられています。そのため長期間にわたるテレワークの実施も勤務形態の変化と言えるので、自由としてはこれに該当すると考えられます。

一方で、勤務形態の変化だけでは、強い心理的負荷があったとまでは通常言えず、単純に在宅勤務になったという勤務形態変化だけで「強い心理的負荷」があったと判断されることはまずないと考えられます。しかし、こうした勤務形態変化に加え、恒常的に月100時間となるような時間外労働が認められる場合には、強い心理的負荷があったと総合的に判断されます。

 

③については、例えばプライベートで離婚や両親の死亡等といった辛いことがあった場合にはプライベートが偏印ではないかというところも含めて、労災になるかどうかは慎重に判断されます。

結論として、在宅勤務を会社が命じたということだけで、労災認定されることは通常ないと考えられますが、恒常的に月100時間以上の時間外労働がある場合には労災認定される可能性が高いです。テレワークになると、成果を上げなければとプレッシャーを感じ長時間労働になってしまうということもあるかもしれず、この点、時間外労働などには通常勤務時以上にしっかりと管理していくことが必要です。

 

テレワーク中のメンタルヘルス対策


なお、在宅勤務で孤独感を感じるといった訴えがある場合には、会社として積極的に社員相互のコミュニケーションを促すような施策を講じていく必要があると考えられます。
例えば、ランチタイムにWeb会議システムを使ってランチを取りながらコミュニケーションをとるといったことや、就業時間後にリモートで参加できるWeb飲み会のような交流の場を設けてもいいかもしれません。現在、高性能かつ無料で使えるといったWeb会議システムも多くありますので、こうしたシステムを活用してチームメンバーが積極的にコミュニケーションを取れるよう工夫するのもいい取り組みだと思います。

 

まとめ


 上記までにご紹介致しました通り、テレワークを実施については労災・安全衛生について頭を抱える方も多いのではないでしょうか。企業はテレワークの就労形態に伴った対応が必要となります。テレワークの推進には、就業規則等の制度面だけでなく、従業員のITリテラシー向上も必要です。この機会にITスキルの可視化を行ってみてはいかがでしょうか?

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