人事評価を行うのはなぜ?

人事の大きな仕事のひとつである人事評価は、人事評価制度をもとに従業員の能力、企業への貢献度、その他評価基準から評価を行い、処遇等に反映する制度です。うまく活用すれば企業の成長に繋がるため、多くの企業で導入されています。 一方で、うまく機能しないと従業員のモチベーション低下やトラブルにつながる可能性があります。人事評価の概要やメリット・デメリットを踏まえ、ご紹介致します。

人事評価を行うのはなぜ?

そもそも人事評価とは

人人事評価とは、企業の目標と従業員のパフォーマンス、労働生産性を比較し、具体的、定期的な手順を経て評価を行うことです。また、各従業員の行動や成果、将来の成長可能性、得手、不得手を把握するのにも活用されます。

人事評価と人事考課の違いとは?

似ている言葉の「人事考課」と「人事評価」の間に意味上の違いはなく、同一視してもまったく問題はありません。実際に人事考課と人事評価を区別せずに使用している企業も多く見られています。

人事考課とは

「公務員や会社員などの勤務成績を評価し、優劣を定めること」 人事考課とは、社員の貢献度、遂行度、業績、能力を評価し、昇給や昇進を含むインセンティブに反映する仕組みです。給与や賞与、昇進や配置転換などを行う際の判断基準です。

人事評価とは

「特定の事物や人物に対し、その意義や価値を認めること」 人事評価とは業務の遂行度、業績などについて、その良し悪しを判断し、結果を人材育成などに役立てることで、組織のパフォーマンス向上を推進する仕組みです。   しかし、明確な使い分けがなされていない場合は、ほぼ同じ仕組みと考えても差し支えありません。 同一視される理由は、2010年以降、多くの企業が人事考課制度の改定に取組むようになったからです。

人事評価の目的

企業が人事評価制度を導入する4つの目的を紹介します。

適切な人員配置により生産性や業績の向上

 生産性や業績の向上企業の生産性や業績を向上していくためには、企業が従業員に対して目指す方向性を示し、同じ方向に向かう必要があります。人事評価制度を、企業理念や経営方針、経営目標などに基づいて作成し、評価項目や基準に適切に反映できれば、企業の進むべき道や求める人物像を明確に従業員に示すことができます。   適切な評価項目を定めて「人事評価」を行うことで下記のことが可能になります。

  • 従業員の成績や適性をしっかりと把握できる
  • それに合わせて人事配置を変更できる
  • 感覚的・感情的な判断を避けられる
  • 上司と部下双方とも異動の理由がわかりやすい
  • お互い納得のいく人事配置の実現につながる

社員の人材育成

 社員の育成も「人事評価」の大きな目的のひとつです。 「現在の部署や役職では何が求められているのか」「何をすれば評価や役職が上がるのか」を評価項目として明確にすれば、社員の将来がイメージしやすくなります。 上司は、「人事評価」によって部下の現状や得意・不得意を把握できるため、今後の仕事の割り振りや教育の指針となるでしょう。また、社員それぞれが評価項目をもとに目標を設定できるため、自主的な成長を促すことも可能です。

従業員の処遇の決定

 年功序列ではなく能力や業績によって従業員の処遇を決定する場合、客観的な指標に基づいた評価を行うことが重要です。人事評価基準を明確にすることで評価の偏りを防ぎ、総合的な貢献度を序列化してみることで適切に処遇を決定することができます。 これまで日本独自の雇用システムとして戦後の復興を支えてきた年功序列型賃金体系や終身雇用制度は、長引く景気低迷や企業のグローバル化など、社会や労働環境の変化に伴い崩壊しつつあります。   現在では年功序列型ではなく、各社が定めた人事評価制度をもとに賃金を決定するようになりました。人事評価制度では従来のように年齢給と職能給の合算で給料を決めるのではなく、客観的に社員の能力や業績、貢献度などを判断し、設定された目標への進捗状況や達成度、担当業務への適合性などを見極め、人材配置や昇給・昇進などの待遇に結び付け、組織内の人材配置の材料にもします。

企業のビジョンや経営方針、目標の明示

 人事評価は、昇格や給料を査定することだと思われがちですが、その他にも大切な目的があります。 そもそも会社がどういう方向に向かっていて、そのために社員にどういうことを求めているのかが一番具体的になるのがこの人事評価なのではないでしょうか。 期待行動や期待成果を重要視したい企業は、会社の基本指針である経営理念や経営計画、行動指針というようなものを人事評価制度に取り入れることが必要です。

人事評価制度のメリットとデメリット

メリット

・上司部下のコミュニケーションが図れる

人事評価を行う際には、社員と評価者とで話し合いの場を設ける、すなわちコミュニケーションをとる必要があります。評価を行うためには、日頃から適切なコミュニケーションをとっていなければできません。 評価者から適切にフィードバックされることで、社員は企業に対する信頼がアップし、社員のエンゲージメント向上にもつながるでしょう。

・組織に対する社員の期待値がアップする

人事評価が適正に行われ、その結果、昇進できることが分かると、会社に対する社員の期待値は上がります。「もっと貢献したい」「昇進してできることを増やしたい」と考える社員も出てくるでしょう。

・目標を設定し、成長することでキャリア形成につながる

人事評価では各自の目標や、将来のキャリア、望む姿を話し合うことになります。 会社内においても各社員の目標や希望を把握することで、会社の目標など、事業に合わせて適切な人材配置が可能になります。

・仕事の生産性がアップする

成果に対し、それに見合った待遇や給料を定めると、より積極的に仕事に取り組むことが期待されます。各社員の仕事の生産性だけでなく、企業としての生産性の向上も見込まれます。

・それぞれの社員のスキルが掴める

人事評価をすることにより、目標としていた内容と現状を比較することができます。社員の現状を把握することは、社員が有しているスキルを把握することにもつながります。

デメリット

先にご紹介したように、人事評価には多くのメリットがありますが、企業にとってデメリットになることもあります。

・評価に個人差が生まれる可能性がある

適正に人事評価が行われていなければ、良くない影響を組織に与えるリスクがあります。あるマネージャーはメンバーをポジティブに評価するのに対し、別のマネージャーは評価が厳しい。というような噂が流れてしまうと、会社に対する不信感がつのることになります。

・全員が満足する評価制度にすることは難しい

このような人が人を評価する制度では、どうしても全員の納得を得ることは難しいでしょう。上司と部下の相性であったり、伸びている事業や停滞している事業もあるため、どの部署に所属しているかによっても評価が異なることがあるでしょう。 日頃から評価制度についての目的や会社の考えを伝え、会社と従業員との信頼関係を構築できるように努める必要があるでしょう。

まとめ

 従来の日本企業は「終身雇用」を前提とした、年齢や勤続年数に応じて給与や役職を上げる「年功序列」の考え方が一般的でした。しかし、近年の景気の変動や雇用情勢の変化、グローバル化や働き方の多様化などにより終身雇用を取り入れる企業が減少し、それとともに業績や貢献度等で評価する「成果主義」や、プロセスを評価する「能力主義」に基づく人事評価制度が取り入れられるようになりました。 厳しい企業間の競争で生き残るためには、社員がみな同じ方向性を持つ必要があります。正規、非正規を問わず、適切な人事評価制度で社員を客観的に評価し、公平な昇給や昇進に反映させれば従業員の働く意欲が高まり、目標の達成に向けて大きく前進できます。   次代のリーダーを見つけ、育てることにもつながるでことこそが人事評価制度を導入、運用する最大のメリットだと思います。

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