人事の退職者に対しての基本~所得税と住民税の控除~

 今回はバックオフィス業務である退職者の所得税と住民税の控除についてご紹介致します。従業員が退職した時に退職金を支給した場合、この退職金も「退職所得」として税金がかかりますので、原則として所得税と住民税を控除することになります。所得税は退職金を支給した月の翌月10日までに納付します。また、住民税を徴収した場合には、徴収した月の翌月10日までに納付しなければなりません。今回はそんな退職者への所得税と住民税の控除についてご紹介致します。

 

所得税と住民税の控除

従業員(や役員)から天引きする源泉所得税は、会社が自分で計算します。

  • 検索場所
    【源泉徴収のための退職所得控除額の表】
    ・国税庁/源泉徴収のための退職所得控除の表
    【退職所得に係る道府県民税・市町村民税の特別徴収税額早見表】
    ・総務省/退職所得に係る道府県民税・市町村民税の特別徴収税額早見表
    【退職所得の源泉徴収税額の速算表】
    ・国税庁/別紙 退職所得の源泉徴収税額の速算表
  • 作成する書類
    ・退職所得の受給に関する申告書
  1. 「退職所得控除額の表」を用意する
    勤続年数に応じて、一定の金額を控除する
  2. 課税される退職所得の金額を計算する
    退職所得控除額をマイナスした金額の2分の1額が課税所得になる
  3. 控除すべき源泉所得税の金額を計算する
    給与所得など、他の所得とは別に税金を計算する
  4. 控除すべき住民税の金額を計算する
    通常の給料とは別に、会社が住民税を計算する

退職金にかかる税金の基本を確認する

  • 退職金から控除するもの
    源泉所得税と住民税だけです。社会保険料や雇用保険料は天引きしません。退職金にかかる税金は、給与所得など他の所得と合算しないで、単独で計算し、納付も行います。源泉所得税だけでなく、住民税も会社が計算し、天引きするので、退職金を支給すると同時にすべての納税が完了します。給与所得のように、翌年に住民税が課税されるということはありません。退職金にかかる税金の計算式は、次通りです。

    ①【課税される退職所得控除の金額(千円未満切り捨て)】×税率=退職金にかかる税金
    ①=(退職金の支給額-退職所得控除額)÷2

退職所得の受給に関する申告書を作成する

  1. 退職所得の需給に関する申告書
    退職金の支給が決まったら、「退職所得の受給に関する申告書」を提出してもらいます。申告書の提出が無い場合は、退職所得控除額をマイナスせずに、退職金の額に一律20.42%を掛けて計算します。
  2. 源泉所得税と住民税を計算する
    「退職所得控除の表」を用意します。該当する勤続年数を見て、右横の「一般退職」欄で退職所得控除の金額を確認します。「退職金の額から退職所得額をマイナスした金額に2分の1を掛けた額が「課税所得」になります
    所得税は、課税所得の金額に応じて、税率が異なります。国税庁のホームページで税率(退職所得の源泉徴収税額の速算表)を確認し、さらに復興特別所得税2.1%を掛けて、天引きすべき税金を計算します。扶養家族の有無で税額が変わることはありません。住民税は所得税と同じ計算方法で課税所得を計算し、市町村民税と道府県民税の税率を掛けて計算します。

    ・市町村民税の税率 一律:6%
    ・道府県民税の税率 一律:4%

退職金600万円(勤続年数10年)の仕訳例

借方貸方
退職金  6,000,000現金または未払金  5,860,000
預り金(所得税)  50,000
預り金(住民税)  90,000

※住民税を市町村民税と道府県民税に分ける必要はない

上記の預り金(所得税)について

(600万円-400万円)÷2=100万円×5%

役員に退職金を支払う場合

役員としての勤続年数が5年以下の人に対して支給する退職金で、その役員勤続年数に対応する部分については、2分の1課税は適用がありません。退職金から退職所得税控除をマイナスした金額に、直接税率を掛けて計算します。

 

まとめ

 今回は退職者の所得税と住民税の控除について説明をしましたがいかがでしたか。給与所得者は、所得税と住民税が給与から差し引かれます。(住民税は勤務先によっては個人払いとなることもあります。)所得税は、支払者がその給与の支払の際に所定の額を徴収して納付する源泉徴収制度となっています。源泉徴収した税額は、その年の所得税額が確定した後、年末調整によって過不足額を精算します。住民税は地方自治体の税金です。所得税(国税)とは異なり、1年間の給与の額が確定したあとで、その翌年に税額の計算を行います。 管理業務の負担を減らすためには、クラウドサービス等の業務効率化ツールを導入してみるのも1つの方法です。そういった給与計算の仕事を円滑に行うには、社会保険労務士の資格取得がおすすめです。働きながら勉強できる資格なので、給与計算の担当としての成長を願うなら資格取得や複業で他社の業務に携わってみてはいかがでしょうか。

 

下記で人事の退職に対しての基本についてまとめ記事を作成しておりますので、ご参考までにご一読ください。

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