会社運営のギモン

 新たにテレワーク(リモートワーク)を導入しようとする事業者や、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて急いでテレワークを導入したものの、導入について十分な検討をする時間がなかった事業者向けに、テレワークに伴って生じうる人事評価・労務・法務・情報セキュリティに関する問題点を簡単に記載致します。今回は、テレワーク導入にあたって、会社を運営するにあたり、取締役会をビデオ会議で開催して良いのか等の会社運営についてご紹介致します。

 

取締役会の開催の必要性


 取締役会を設置している会社では、取締役会を開催しなければ決定できない事項が法律上定められています。(会社法第362条)。例えば、代表取締役に事故があって、新たな代表取締役を選定する場合や、多額の借り入れを行おうとsる場合には、取締役会の決議を経る必要があります。取締役会の決議を経ずに代表取締役が行った取引行為は、社外の取引相手との関係では有効ですが、そのような取引によって会社に損害を与えたようなときには、関与した取締役が会社や株主に対して損害賠償責任を負う場合があります。

 

各取締役が自宅から参加する取締役会


法律上は、取締役会の開催について、前取締役が物理的に一か所に集まって実施しなければならないとは定められていません。よって、電話やビデオ会議システムを利用した取締役会の開催も認められます。

 但し、取締役会は各取締役が相互に意見を交換することで会議体として意思決定を行うための機関です。したがって、即時(リアルタイム)かつ双方向のある議論を行わなければ、取締役会が開催されたとは法的には評価されません。その点、一般的なビデオ会議システムであれば、即時かつ双方向性のある議論が可能です。一方、あらかじめ録画した議長の説明ビデオを配信するのみだったり、一部の参加者のマイクを終始ミュートにしたままだったりした場合は、即時かつ双方向性のある議論が無かったとして、取締役会の開催の実態がなく、取引などが適法な取締役会の決議を経ていないとされるおそれがあります。

 

議事録上の開催場所


ビデオ会議システムを利用して取締役会を開催する場合でも、議事録において開催場所の記載が法律上必須であるため(同法施行規則第101条3項3号イ)、取締役会の開催場所を決めておく必要があります。

取締役会の開催場所は、議長が取締役会に出席している場所を開催場所とするのが一般的です。議長を含めた取締役会が自宅から出席しているようなケースでは、議長の自宅を開催場所として取締役会の議事録に記録することになりますが(平成14年12月18日民商3044号民事局商事課長回答)、取締役会の議事録は第三者に閲覧されることがあるので注意が必要です。(同法371条)。もっとも、代表取締役の住所は商業登記簿上で公示されている情報なので、(同法第911条3項14号)、代表取締役が議長を務める場合には、取締役会議事録に代表取締役の自宅の住所を記載することに神経質になる必要はないでしょう。

 

取締役会議事録への電子署名


取締役会議事録へは、出席した取締役と監査役が署名または記名押印する必要があります(同法第369条3項)。この署名または記名押印は、電磁的記録への電子署名で代えることが出来ます(同条4項、同施行規則第225条1項6号)。なお、商業登記の手続きのために法務局へ提出可能な添付書類に使用できる電子署名は、従来は公的個人認証サービス(マイナンバーカードに格納された電子証明書)か、特定認証業務電子証明書であって法務大臣が指定するものを利用する必要がありました(法務省「電子署名法の概要と認定制度について」)。そのため、出席者の一部がマイナンバーカードを持っていない場合は、電磁的記録として議事録を作成することは難しいとされてきました。しかし、コロナ禍を受けて、クラウド型(第三者の立会型)の電子署名でも許容されることとなり、利便性が向上しています。

なお、書面で議事録を作成する場合には、各取締役が押印するページが同一である必要はありません。各自でページを印刷して押印・郵送してもらい、あとから一つの議事録に編綴する方法が簡便です。

 

まとめ


 上記までにご紹介致しました通り、テレワークを実施については情報セキュリティについて頭を抱える方も多いのではないでしょうか。企業はテレワークの情報セキュリティへの対応が必要となります。テレワークの推進には、取締役会の鵜寧方法にも検討する必要があります。業務の情報セキュリティなどに気を付けた上でテレワークを推進していきましょう。

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